イジメにも通じる、ボクシングのディフェンス能力

杉田ジムの練習では、僕やトレーナーがグローブやディフェンススティックを使い、選手や会員に避ける練習をしてもらいます。こちらに「ダメージを与えてやろう」なんて気持ちは一切ありません。避ける練習だから、当たったとしても痛くないようゆっくりパンチやスティックを出すだけです。

それでも、ときには当たってしまうことがあります。そのとき、防御側はどう思うか?「もっとディフェンス練習しなきゃ!」と前向きに受け取る人がほとんどだと思います。
「わざと当ててきたな!コノヤロー!」と怒ったり、「トレーナーは俺のこと憎んでるのかな…」なんて被害者妄想をふくらませる人はまずいません。さらに面白いのは、攻撃側は当てないように出しているのに、防御側が反応しすぎて〝自ら当たりに行く〟なんてこともあります。

これ、人間関係にも似ているなぁと思います。たとえば軽いノリで「太ったね」と言われたとします。避けるのが上手い人は「さいきん生活が豊かで食べすぎちゃいました」と笑って返せる。
でも反応しすぎる人は「デリカシーのない人間だ!」と相手を批判してしまう。批判された側は「え⁉そんなつもりじゃ…」と戸惑う。逆に、本当に悪意を持って攻撃してくる相手でも、避ける技術があれば傷つくことはありません。

よく「いじめる側が悪い」と言いますが、本当にそうなのか。攻撃側に悪意があるかどうか。そして防御側に受け流せる技術や度量があるかどうか。その両方が大切なんだと思います。

だからこそ、ボクシングにおいても社会においても、〝攻撃されても受け流せるディフェンス能力〟がすごく大事だと感じました。メイウェザーはボクシングでも実生活でもディフェンスが上手かったなぁ。