ボクシングが不向きな中学生

たしか僕が中学一年生のとき、二つ上の兄が「ボクシングやろう」と言ってきた。 正直、あまり興味はなかった。 でも兄は、スーパーのビニール袋に新聞紙を詰めて、グローブに見立てたものをすでに作っていた。 仕方なくそれを拳に装着し、〝ボクシングごっこ〟が始まった。

パンチは怖いし、当たれば痛い。 自分のパンチが当たったところで、たいして面白くもない。 数分やったところで、僕はやめた。

このとき、誰がどう見ても「杉田竜平にボクシングは向いてない」と思ったはずだ。 でもそれから数年後、僕は友達の家で読んだ漫画『はじめの一歩』をきっかけに、ボクシングに目覚めた。

人間って、ふとした切っ掛けや気付きで化けることがある。 だから親や指導者って、その時が来るまで、じっと信じて待てるかどうかが大切なんだと思う。

「いい子にさせたい」「いい人生を歩んでほしい」―― そんな気持ちから、怒ったり、恐怖でコントロールしたりするのは、昭和や平成初期の頃は当たり前だったけど、今はもう違和感しかない。

僕は一昨年の夏、ふとした興味からゴルフに目覚めた。 ボクシングにはまったあの頃と同じ感覚。すごく愉しい。 練習は毎日やっているけれど、それは練習というよりも、遊びであり、気分転換であり、没頭できる大切な時間。

強制ではなく、内側から湧き上がる興味や情熱こそが、人を大きく成長させるのではないか――そう思う。