大きな花を咲かせたい!

最近、ジムにはプロを目指す若い世代も増えてきた。他競技の経験がある子もいて、闘争心やリングへの憧れに満ちている。「とにかく試合に出たい!」という感じだ。若さゆえの勢い、純粋な情熱、敗北を怒れない心、その闘争心は本当に素晴らしいと思う。

でも、ボクシングを始めてまだ間もない選手もいる。パンチの正確性や距離感、当て勘、基礎、基本──他の格闘技経験があったとしても、ボクシングは繊細なスポーツ。ここを丁寧に積み上げないまま、ただ闇雲に試合を重ねてしまうと、 一時的な経験は積めても、基礎が歪んだまま固まってしまうことにもなりかねない。

試合に出すのは簡単だ。 でも、指導者として大切なのは「今、何を積ませるべきか」を見極めること。 まだ海のものとも山のものともわからない段階で、闇雲に試合に出してしまうのは、その子の未来を短くしてしまうこともある。試合に出すこと自体が目的になってしまうと、大切な「育つ時間」を失ってしまうこともある。

無理に試合に出させることよりも、先ずは自分の足場をしっかり固めるほうが、結果的にずっと遠くまで行ける。焦らず、足元を見つめ、基礎を愉しむ。 その時間こそ、後に勝てる選手になるのではないかと思う。

基礎固めや土台づくりは、成果を実感しづらく、面白くないかもしれない。 だけど、
〝いずれ花が咲くという未来を信じ、土台づくりをたのしめる心〟
を、若い選手には伝えていきたい。

ひょっとしたらそこが指導において一番難しいところなのかもしれない。派手な技術を教え、すぐに試合に出させれば選手は喜ぶかもしれないけど、僕は一指導者として、そしてボクシングを心から愛する者として、信念を持ってやっていきたい。